社会保険は、生活の中で直面する病気や失業など様々な危険(リスク)を一定の保険事故として、保険の給付を行う制度です。
保険料を払うことを拠出といい、サービスなどを受けることを給付といいます。
社会保険の加入者で保険事故が生じたときに給付を受けることができる人を被保険者といい、保険機関を運営する者のことを保険者といいます。国や自治体が保険者になることが特徴です。運営費は被保険者や雇用主が支払い、一部公費(税)で負担する部分もあります。
一定の条件のある人は強制加入となります。社会保険は、社会保障の中核を占めており、社会保険給付費の91%を占めています。
社会保険には、次の5種類があります。
医療保険,,年金保険,雇用保険,労災保険,介護保険
(1)医療保険について
医療保険は国民皆保険です。赤ちゃんからお年寄りまで、すべての国民はいずれかの医療保険に加入することになっています。
医療保険には次のような種類があります。
協会けんぽ、組合管掌健康保険、船員保険 ,国家公務員共済組合保険、地方公務員共済組合保険 私立学校教職員組合保険、国民健康保険、後期高齢者医療保険。
国民健康保険には、市町村国民健康保険(市町村国保)と国民健康保険組合(国保組合)があります。
国民健康保険には、高齢者や非正規雇用者や低所得者が多く、全世帯の約半数が加入しています。事業者負担はなく被保険者が保険料を直接納付するのが特徴です。
本人、家族の区別はなく、世帯単位で保険料が課されます。世帯主が負担義務を負います。
後期高齢者医療制度は、75歳以上を対象にした独立の制度です。
後期高齢者医療制度の被保険者は75歳以上の高齢者で、健康保険や国民健康保険から脱退して同制度に強制加入となります。
保険料は、75歳以上の高齢者から徴収する保険料、約1割と、各医療保険者からの支援金約4割、公費約5割でまかなっています。
給付は原則1割負担です。
保険者は都道府県広域連合で、受付業務などは市町村が行うことになっています。
75歳になると、この後期高齢者保険に強制加入となります。また、生活保護世帯は適用除外となります。被保険者は約1千3百万人。広域連合ごとに保険料が違います。
ただし、現役並み所得の高齢者の場合、公費負担の対象とされず、その医療給付費は高齢者の医療費10%、各医療者からの支援金90%でまかないます。
低所得者に対しては低減制度があります。
保険料は個人単位で課され、年額18万円以上の年金受給者は、介護保険と同時に年金から天引きされます。年金から天引きとならない高齢者は市町村に直接納付することになっています。特別な理由がなく滞納した場合は、保険証取り上げなどの制裁措置がとられます。
医療給付の仕組み
まず、被保険者や家族が病気やけがをした場合、病院や診療所に行って、保険証を見せれば、かかった医療費の一部だけを払えば治療を受けることができます。これを療養の給付といいます。治療や投薬などの形で医療行為が行われるため、現物給付といわれます。
70歳以上は今年4月から原則1割負担になることが予定されています。
70歳未満の被保険者本人や被扶養者の場合は、一部負担が3割となります。
高額療養費は一定以上の場合払い戻しがありますが、申請が必要です。
入院の場合は申請により、一定額を超えた場合それ以上の窓口負担はありません。また、同一家族が同じ月に入院している場合、合算した額が上限となります。これを世帯合算といいます。
ただし、入院時の食事、差額ベッド代などは、高額療養費の対象にはなりません。
(2)雇用保険について
解雇や倒産などで失業してしまった場合は、失業時の生活保障として、雇用保険があります。労働者自らが職業訓練を受けた場合に給付を行うことで労働者の生活や雇用の安定をはかるとともに、雇用機会の増大をはかることが目的です。雇用保険は業種、規模に関わらず、労働者を雇用しているすべての事業に適用されます。
給付には休職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
(3)労災保険について
労働者が働いているときに労働災害にあった場合の保障が労災保険です。
労働者が負傷・疾病・障害・死亡、これを傷病といいますが、それが業務上であることのみを条件に一定の保障を与える制度です。
原則として1人以上の労働者を雇用する事業所すべてに適用されます。
ただし、常時5人以下の事業は、任意届け出となっています。
雇用形態の違いに関わらず、すべて適用労働者となります。
労災保険料は事業主がすべて負担します。保険者は政府です。
業務災害に当たるかどうかの認定を受ける必要があります。
業務遂行中に発生したもので、しかも業務に起因したものに加え、労働者が通勤途上に災害に遭遇し傷病した場合も通勤災害として、労災給付の対象となります。
労災保険の給付には、療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付などがあります。
過剰労働により脳、心臓疾患による過労死勤務のストレスを原因とする心因性精神障害にかかり、自殺に至った過労自殺も労災認定されています。
(4)介護保険について
介護保険の被保険者が、介護が必要になった場合、保険者である市町村が行う要介護認定を受けて給付資格を認められ、介護サービス計画や介護予防計画(これらをケアプランといいます)、を作成して市町村に提出し、居宅サービス事業者や介護保険施設と契約を結び、ケアプランに基づいて、ホームヘルプ・サービスやその他のサービスを利用した場合、そのサービス費用の9割を給付する制度です。残りの1割は利用者が支払います。
被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳までの医療保険加入者である第2号被保険者に区別されています。
第1号被保険者の保険料は個人単位で課され、保険者、市町村ごとに異なり、3年ごとに改訂されます。介護保険料は月額1万5千円以上の年金受給者は、年金天引きで徴収され、低年金の高齢者も自ら市町村に支払う必要があります。第2号被保険者は、医療保険と同じ方式で課され、医療保険とともに徴収されます。
要介護認定は、市町村が認定を申請した被保険者に対して要介護度を判定するものです。また、第2号被保険者は老化をともなう疾病により、要支援・要介護状態になったことが条件となっています。
さらに、要介護度ごとに給付に上限が定められ、限度額を超えるサービス利用は全額自己負担となります。